物語
ペンチャは不器用な手を振って、旧友に挨拶をする。その友達とはベッドの真上にある天井の梁だ。優雅でゆったりとした木目こそが梁の「言葉」であり、ペンチャは毎晩そのストーリーに耳を傾けている。今夜、ペンチャは友達の木目の中に、夏の夜風に揺れる葦の群れや、川辺でリュートを爪弾く騎士を見た。その歌声は、お姫様の窓辺に降る霧雨へと姿を変えていく…物知りの梁は毎晩違うストーリーを聞かせてくれて、ペンチャの長夜のお供をしてくれる…ミルクティーの飲みすぎでよく不眠に陥るペンチャだが、丸っこい体型ゆえに起き上がることも寝返りを打つことも難しい。ただ天井を眺めることしかできず、それが眠れない夜の苦痛をさらに深めている。それでも幸いなことに、ちっとも退屈はしていないようだ。











